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産業構造のいびつさを肯定させようという悪意を感じる

先日、東証一部上場製造業の財務最高責任者(CFO)と話していたときに「このまえ、投資銀行の人のお給料聞いて驚いたよ。まだ30台なのに、うちの社長の給料より高いんだよね。と言われまし た。

「一日13時間働き、5時間勉強し続ける生活を7-8年は続けた結果ですからねえ。おそらく、御社の社長が今までの人生で費やした勉強時間やビジネスのトレーニング時間以上の時間を、この7-8年で費やしています。それに、コン サルや投資銀行って、働けて10年なので、みなさんが30年かけて獲得する生涯年収を10年で得ないと生活できないんですよ。」と答えておきました。

私の答えは、確かに嘘ではありません。私自身の人生を振り返ってみても、どこかに旅行にいった記憶もほとんどなければ、家でノンビリとテレビを見ていた記憶もありません。

プロジェクトをして、読書をして、新しい方法論を考えて、健康維持のための運動をして、毎日が過ぎ去っていきました。常に投資対効果を考 え、仕事で使うフレームワークで家庭生活も介護もマネジメントしていく生活。それをやり遂げられたのは、確かにコンサルタントとしてのトレーニングの賜物 でしょう。

しかし、私にとってよくわからないのは、私は3人分の介護施設費用をまかなうという目的があったので、お金が必要だったのですが、周囲を見回しても、それほど「そこまでして働かなければいけない」理由がある人っていないんですよ。

それなのに、何で巷ではここまで、年収アップのためのノウハウ本が売れ、まるで誰もがビジネススキルをアップしなければいけないかのような錯覚を与えかねない世の中になっているのでしょうか?

格差社会の到来で、自分自身が格差の下のほうにランクされることに対する漠然とした恐怖があることは理解できます。しかし、では格差社会が進んでいる諸外国で、俗に下流層と言われる人たちの生活が本当に不幸なのでしょうか?

私は、各国のストリートで楽器を演奏し、ダンスを踊り、つつましく生活していた彼らが不幸には見えませんでした。また、私自身が、生活保護を受けて、母親と二人でなんとか糊口をしのぐ生活をしてきましたが、その生活が不幸だったなどとは全く思っていません。

収入格差が子供の学力に影響する。平均すれば、それは確かにそのとおりでしょう。それは、都営住宅2種と言われる団地の出身者である私の幼馴染達の学力や現在の平均収入を考えればとてもよく分かります。

ですから、収入格差が子供にまで格差を引き起こすというニュースを聞いた親達が子供のために少しでも収入を増やしたい、と考える親心は分かります。 しかし、そのために全てに効率性を求め、心のゆとりを犠牲にし、細かくタイムマネジメントを行い、全力で子供に向き合う時間を極端に減らしたとします。塾 や家庭教師の効果で子供の学力が上がったとして、親が自分を愛しているという絶対的な自己肯定ができない子供に育つリスクが高まるとうい恐怖は感じないの でしょうか?

日本のホワイトカラーの労働生産性は本当に低いです。労働生産性をあげ、短時間勤務で家に帰って家族と一緒にすごしたい。

この発想はきわめて正しいと思います。しかし、現実問題としては、日本の伝統的な企業に勤務している限り、自分だけが仕事を効率化したとしても、全体の労働量は減らず、早く帰れるようにはなりません。

結果的に、一部の特殊な社風を持つ企業以外では、ビジネス能力を伸ばすための努力をすれば企業内での評価は高くなり平均よりはちょっとはお給料が高くなるけれど、今まで以上に家族と過ごす時間はなくなる、という正反対の結果をもたらしています。

格差社会が到来した。

それは確かにそのとおりだと思います。でも、そのときに本当に発信すべき情報は「こうすれば上流階層の仲間入り」というノウハウ本だけなのでしょうか?

なぜ、ネットでも書店でも「どれだけ格差があっても、それなりに幸せに暮らしていけるよ」という情報がほとんど見つからないのでしょうか?

あまりにも情報が偏っていて、何かの意図や悪意を感じてしまいます。

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