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組織の社会的責任が国際規格化

「あなたの専門は何ですか?」と聞かれるたびに「組織のマネジメントシステムや組織運営の標準化です」とお答えしているのですが、なかなか通じません。標準化という言葉を使ってしまうと、組織を画一化する活動と誤解されることもあり、近頃は通じないことは十分承知のうえで「マネジメントシステム」とだけ言うようにしています。

マネジメントシステムというのは、企業だけではなく、社会生活全般を支えるための、組織・団体運営の標準的な考え方です。

例えば「良いことをしている会社の株を買って経営をサポートしたい」と考えたとします。すると、SRIファンドを購入したり、SRIファンドに組み込まれている企業の株式を購入すると思います。

しかし、SRIファンドの中をじっくりと観察してみると、明らかに人体に対して有害な商品が売上げの過半数を占めていたり、日本国内では優良企業でも国外で児童強制労働をしていたり、自社の社員には十分なお給料を支払っていても下請業者を徹底的に搾取している企業が組み込まれていたりします。

SRIファンドの基準は、各募集企業が定めているので、あなたが考える「良い会社」と募集企業が考える「良い会社」が一緒であるとは限らないわけです。

この「良い」という価値観が「感性」に依存する、デザインであったりサービスの内容であれば、人によって異なる(価値観が多様である)ということは、とても良いことだと思います。

しかし、地球・世界経済の一員として果たすべき役割を果たしているかどうか、といった責任という視点が多様になってしまうと、各国・各社が勝手気ままに他者(他社・他国)を搾取することになってしまいます。ですので、責任を果たす・他社にマイナスの影響を与えていないという観点からの「良さ」をはかるための、ある程度の標準的な判断基準が必要になります。

そのため生み出された考え方が、法律と違って国境を越えても有効な「国際規格」という考え方です。

一般的に、国際規格には法的な拘束力はありません。違反をしても罰金を取られたり、刑事罰を受けるわけではありません。あくまでも、紳士協定です。

おまけ:TBCが個人情報保護法施行前に起こした個人情報漏洩事件は「国際規格として個人情報の重要性は制度化している時期の事件であり、企業責任を問うことは可能」との裁判所判断により、判決が下りました。ですので、実際には全く法的な拘束力がない、とは言えないかもしれません。

ISO9001(品質マネジメントシステム)、ISO14001(環境マネジメントシステム)、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)という言葉は聞かれたことがあるかもしれません。これ以外にも、さまざまなマネジメントシステムや標準化が存在しています。

冒頭にお話しした「良い組織」の標準も「組織の社会的責任」として徐々に整備されつつあります。

一般的にはCSR(Corporate Social Responsiblity)と呼ばれますが、国際規格の対象は企業だけではなく、非営利組織も風くむため、Cを抜かしてSRと呼びます。

日本規格協会(JIS規格を作っているところ)がSRの国際標準のドラフト案の日本語訳を発表しています。ドラフトなので、まだ変わる可能性はありますが、このドラフトによると、組織の社会責任は7つの主要な課題に対して、バランス良く対応することであると定めています。

  1. 組織統治(法令遵守、説明責任、透明性、倫理的行動)
  2. 人権(禁差別、権利の保護、違反者への協力禁止)
  3. 労働慣行(社会的弱者保護、労働者保護、労働安全衛生)
  4. 環境(保護、予防の重要性、汚染者負担の原則、持続可能性の維持、生物の多様性の維持等)
  5. 公正な事業慣行(適切な組織と組織の関係の構築、汚職防止、責任ある政治的関与)
  6. 消費における責任(適切で誠実な消費者および消費者団体との関係構築維持、持続可能な消費、)
  7. 地域社会への責任(コミュニティ参画、地域経済発展、地域経済開発)

主要課題やガイドラインの各節タイトルだけを抜き出しても、日本で一般的に「良い会社」と言われる、基準とは、少し視点が違っていることがお分かりいただけると思います。

仮訳のため、かなり読みにくい日本語ですが、「良い組織とは何か」を考えるうえでは、とても良い参考資料です。

SRの国際標準は、ガイドラインとして制定されるだけで、認証基準のように審査制度は作られない予定です。ですので、国際基準に準拠しているかどうか、という画一的な審査制度はできません。

近い将来、さまざまな証券会社が、この国際基準を参考にSRIファンドを作り、SRIファンドに組み込まれることが株価UPにつながったり、就職希望社が増えるといった良い循環が生まれることを期待しています。

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