資格があっても仕事はできないけど、資格があって良いこともたくさんある
私は、受験して合格はしたけれど未登録という資格がたくさんあります。
- 登録をすると継続研修の受講義務が発生するので面倒くさい
- それなりに権威がある資格を名刺に刷ると、その資格分野の専門家としか見られなくなり、本来の専門(業務分析や組織心理)の人と見られなくなる
- 知識の整理や知識の獲得をしたくて受験しただけで、もとから資格を名乗るつもりがなかった
というのがその理由です。(昔、勤務先に言われていろいろな資格試験を受験したけれど、私の事務管理能力が低くて、合格証がどこかに行ってしまった、という間抜けな理由で放置している資格も結構ありますが。。。)
さて、私に業務を依頼してくださるお客さまは、私の名刺に今以上にたくさんの資格がすってあったら、今よりも時間単価を上げて下さるでしょうか?絶対、あげてくれないと思います。それも、資格を維持するモチベーションが働かない1つの理由でもあります。
では、私が資格取得に懐疑的なのか、というとそんなことは決してありません。
新人社会人として働き始めた時に、インド人の上司が「仕事の中身が分からないことを失敗の言い訳にする人が多い。Lammyはそんな言い訳ばかりの社会人になっちゃいけないよ」と繰り返し言っていました。
当時の私の仕事は総務業務と監査の通訳でしたので、いちばん手っ取り早い業務理解方法として、監査の試験勉強をすることにしました。日本の公認会計士試験は監査論だけを勉強しても合否が分からないので、米国公認会計士の監査論(Audit and Attestation)の勉強をすることにしました。
監査が始まる前の監査手続きの翻訳、監査中の通訳、報告書の翻訳などをしながらの受験勉強ですから、一般的な受験生よりもはるかに楽な受験勉強です。しかも、分からないことがあれば、現役のCPAにいつでも質問ができます。それほどの苦労はありませんでした。
こうして、新人として業務に就いたその時に、体系的に監査というものの勉強をしたため、その後に業務をとおして学んだことを体系化することが容易になりました。
ですので、新人の時にUSCPAの受験勉強を一生懸命に行って、本当に良かったと思っています。
数年前に、CIA(Certified Internal Auditor,米国公認内部監査人)は4科目中2科目が監査論と監査の実践手順だと知りました。監査というものの本質が分かっていたなら、勉強しなくともある程度の点数は取れるはずだ、などと自分に言い訳をして、予定していた勉強をほとんどしないまま、ぶっつけ本番で受験。結果は、合格でした。
CIA2科目を準備せずに受験して合格して、身をもってはっきりと分かったのが、アメリカの資格試験や、日本の非国家資格(簿記、情報処理技術者試験などのほぼ国家資格的な資格も含む)は、その業務に就いて10年もしていたら、合格して当たり前の内容を出題しているだけで、特に難しい試験ではない、ということでした。
ですから、内部監査部門で4-5年勤務している人がCIA試験を受験して落ちた、というような話を聞いて、最初のうちは信じられませんでした。
しかし、ある日、この記事で書いた、監査という業務を全く知らない人と話していて、はたと気がついたのです。
自分の中にあるべき論がなく、周囲にも明確なあるべき論がない中で何年業務をしても、自分の内側にハッキリとした軸はできないんだ!
私が勉強しなくてもCIAに合格をしたのは、USCPAの試験勉強をとおして「監査論とは」という基礎的な考え方を吸収し、その後、「あるべき論」を自分なりに持っている上司の指導を受けながら業務に従事してきたからであって、私がすごいわけでも、何でもありません。
しかし、周囲は、私がどういう上司の指導の下で仕事をしてきたかなどは知りませんから、まるで私がすごいかのように思ってしまうわけです。
これは、周囲が私の元上司達を知らないことが私の価値を必要以上に高めている、という少しだけ私にはラッキーな話ですが、残念ながら、逆のパタンも相当に多いはずです。
- 上司にも組織にも「この業務はこうあるべき」という考え方がない。
- 「この業務はこうあるべき」という基準はあるけれど、その基準が他社では全く通用しなかったり、日本の特殊な組織(旧財閥系だけ、とか、製鉄だけ等)では通用するけれど、グローバルベストプラクティスの正反対で、転職したら何の役にもたたない。
という環境でお仕事をしている方は、相当数、いるはずです。
自分がこういう環境なのだ、ということに気がついている人はまだラッキーな方で、もしかしたら、自分がいる環境が標準的で、どこでもこういうものだ、と思いこんでいる人もいるかもしれません。
そういう人は、今までに自分が行ってきた業務手順そのものを転職先でも適用しようとして、コンフリクトを起こします。このことは、中途採用をよくする組織では、常識として知っていますから、1社での業務経験が長く、経験に見合った資格を有していない人を、どうしても敬遠しがちになります。
資格があっても、仕事はできません。でも、資格があったら「勤務先の業務手順だけではない、あるべき論を理解している」ということは分かります。また自社の業務が勉強したことに照らし合わせて明らかに非効率な場合、業務改善に役立てることもできますし、業務改善できる体力や倫理観がなければ転職しようと決心するきっかけになるかもしれません。
そういう意味では、やはり、自分の業務に密接に関係している資格があるのだとしたら、一通り勉強をすることは、とても有意義だと思うのです。
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