マック判決 「店長は管理職」を認めなかった
マクドナルドの店長を管理職とみなし残業代を支払わなかったことは違法であるとの判決が出ました。
この4年間、ITリスクの仕事が中心で、労務リスクの対応コンサルティングから離れています。ですので、現場感覚がかなり薄らいではいるのですが、それでもこの判決の大きさは、しみじみと実感できます。
経済界の一方的な主張ではなく、じっくりとコツコツと世論を形成しつづけてきた労務管理者達の感覚が裁判所に届いたことを、心からうれしく思います。
新聞記事をオンラインで読むことができますので、詳しくはこちら(読売)やこちら(毎日)をご覧ください。
労働基準法の基本理念に照らしあわせれば、当たり前の判決です。
- 労働時間を厳密に管理されている(接客を行っており自分の裁量で労働時間を決めることができない)
- 長時間残業を強要されている(どれだけの工夫をしても8時間で終わらない)
- 経営陣の決定に参画していない
チェーン店の店長が労働基準法上の管理職なはずがありません。
もちろん、プロジェクトへのチャージが週40時間を超える、人事関連の権限を有さないコンサルティングファームの管理職達も法規上の管理職ではありません。(これは実際に、さまざまな示談が起きているので、業界では周知の事実でしょうが・・・・・)
それなりの大きさがある組織の人事・法務部門であれば、労働基準法の基本的なコンセプトは十分に理解してたはずです。しかし、多くの組織は、会社側の主張がとおると信じてきたわけです。
世の中に対するインパクトなどを考えると、店長が管理職ではないという判決がでる確率が低いと考えたのでしょうか?
自社の社員が訴訟を起こすリスクは低いと考がえたのでしょうか?
今までの各種政治活動に費やした経済団体の寄付金額を考えると、使用者(会社側)に不利な判決は下りにくいと考えたのでしょうか?
リスクマネジメントプロジェクトを支援していると、多くの組織で「法律っていうのは基本理念ではなくて、どう運用されているのかを見て、今の時点で問題がなければ基本理念など考えなくて良いじゃないか」という反論を受けます。
特に、日本の労働基準法は運用と基本理念が著しく乖離していて、法の基本精神は完全に無視をした社内制度が世の中に溢れています。
今回の判決で、こういう風潮に大きな歯止めがかかることを期待しています。
マクドナルドは控訴する方針とのことなので、どういう戦略を考えているのか、とても興味があります。