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コンサルタント出身者と、あんまり働きたがらないわけ

巷ではJ-SOXと呼ばれる金融商品取引法の施行をひかえて、昨年の春辺りから世間では内部統制の整備業務の人手がたりず、奪い合いの状態が起こっています。

監査法人や監査法人系のコンサルティングファーム出身者、米国上場企業の日本法人で内部監査や経営企画を行っていたビジネスパーソンは、具体的に何ができるかということとは無関係に、とりあえず高値で転職ができるという異常事態です。

私のところにも、おそらく私のことをまったく知らないし、私が何ができるのかもご存じないだろうなあ、と思われる人材紹介会社さんからも時々電話やメールをいただきます。(これは、私の専門スキルや能力とはあまり関係なく、とりあえず一定の経験と資格を持っている人には片っぱしから声をかけているという状況だと思います。)

こういうお電話をいただくと、「お、人手が足りないってことはコンサルティングを外注する可能性があるな。営業に行ったら仕事もらえるかも」という営業魂がムクムクと湧いてくるので、最後までお話を伺うことにしています。

ところが先日お電話いただいたある会社さんだけは「そういう会社には全く興味ないですから」と途中で電話を切ってしまいました。

どういう会社かというと、人材紹介会社さん曰く「トップマネジメントにも間接部門にも監査法人系と戦略系の両方のコンサルティングファームの出身者がとても多い会社さんでの、人事企画と内部統制構築のお仕事です。ポストコンサルタントとして最適なキャリアだと思います。」ということでした。

このトークを聞いた途端「そんな会社、絶対嫌だ。どうせ仕事もくれないだろうから電話切ろう」と思いました。

なぜ嫌だと思ったかはさておき、仕事をくれない理由は明確です。

コンサル出身のお客様って、すごく付き合いにくいんです。コンサル出身者が多い会社は、コンサルファームに対して提案書を出すように依頼をします。そして、提案内容を熟読した上で、どの会社の提案も採用しない、ということが多々あります。コンサルティングビジネスで一番頭と時間を使うのは、プロジェクトの設計段階です。詳細提案をするということは、いくつかの仮説を提示した上で、プロジェクトをタスクベースに落とし込んでスケジューリングもして文章化をするということです。そのためには基礎データは購入して分析をしますし、場合によってはそのデータを提案書に添付します。

プロジェクトマネジメント能力に長けたコンサル出身者が多数いる組織であれば、数社からの提案書があればその後はその提案書のいいとこ取りでプロジェクトを設計しなおして、自分たちで進めていけばよいわけなので、コンサルタント達は不要なわけです。

私自身も某事業会社に出向していたときには、同じことをしてましたので、あまり人様を責められた口でもないのですが、いずれにせよ「発注責任者や契約交渉先がコンサルティングファーム出身者」というのは、あまり嬉しくありません。

というわけで、提案の機会はたくさん下さるだろうけど、おそらく発注してくださることがない相手に営業に行くのは馬鹿らしいということです。(おそらく、同意見ですよね?>コンサル出身の皆様)

では、なぜこの会社に対して「そんな会社嫌だ」と思ったのでしょうか。それは、私のコンサルタント出身者に対する懸念があります。

例えば、大きな不祥事を起こし世論を敵に回し、業績回復を行うことが難しいと思われる企業があったとします。財務諸表、株価、株価予測、資本政策などを分析すると「このまま組織を存続させるよりも清算した方がいい」という判断になったとします。

こんな時、コンサルタントやポストコンサルタントの人たちの中には、当然のように「あの会社もう無理だよ、さっさと清算しちゃえばいいのに」と発言する人が多数います。そして、数字的にはそれ以外の選択肢がない以上、この意見に同意をするのが当然でしょう、という態度で同意を求めてくるわけです。

つまりそこには、その組織で働く人たちへの共感や同情が皆無なわけです。

以前にこのブログでも書きましたが、私は以前、ポストM&Aの人事融合政策やプレM&Aのデューデリジェンスをしていました。その際、私の上司となるマネジャー達が当然のこと、という態度で「不採算事業の売却・撤退、吸収された企業側の間接部門の人材の解雇」というレポートを書くのを見ながら、「何かがおかしい」と思い続けていました。

確かに数字で見ればそれが正解に見えます。しかし「数字では見えないけれど、何かがおかしい」そう思いつづけました。

実際、数字上は正しいとしか思えない選択肢の多くが悲惨な結果をもたらしてきました。そして、コンサルタントや会計士を入れずに自社だけでポストM&Aを乗り切った組織の中には数字的には正しくない選択をしたにも関わらず、想定以上のシナジーを生み出し、大きく飛躍する企業が少なくないことに気がつきました。

そして、この両者の違いは数字ではなく、世間一般では数値化することが困難だと言われている「統制環境(社風や社員のコンプライアンス意識、モチベーション等)」に起因するのではないかと思い至りました。(もちろん、私は心理学の出身なのでこういう結論になったということには大きなバイアスがかかっている可能性もあります。)

この結論の正誤はいまだに不明ですが、とりあえず当時の私は「数値化できないと呼ばれているこれらを数値化・指標化して、今までの数字中心の組織再編論が間違えているということを証明してみせるぞ!!」と燃えたわけです。

そして、インタレクチュアルキャピタル(無形資産)の数値化、バランススコアカードによるお客様志向・社員志向・学習する組織の成熟度の数値化によって、異なる2つの組織の融合がどの程度困難であるのかを予測するモデルを作ろうとしていました。

さて、こんなことを始めた社員を、勤務先である監査法人や、M&Aにおける業務提携先であった戦略ファーム(+証券会社)は、この試みをどのように見ていたでしょうか。

多くの人たちは、かなりの困難をともなうこうした指標の数値化よりも、財務データと株価を中心とした表層的な組織分析を採用し続ける方がビジネス効率が高いと主張しました。しかし、ブランドなどの財務指標化しやすい無形資産の数値化は進められました。(監査法人やコンサルティングファームの立場に立てば、たしかにそれは間違いなく「ビジネス効率が高い」です。しかし、それがクライアント企業のビジネス効率であるかどうかは甚だ疑問です。)

このように、コンサルティングファームに長くいると、簡単に数値化することができないものを判断材料に採用しなくなりがち、という傾向があります。

もともと、上昇志向やブランド志向が高く、人より上に立ちたいという気持ちが強い人が有名コンサルティングファームには入ってくる傾向もあります。

この2つの傾向が相乗効果となって「他人に共感することができない」働くロボットのようなコンサルタント、ポストコンサルタントが大量に製造されるわけです。

私のビジネススタイルをリアルでご存じの方はお分かりのとおり、私は自分の部門にコンサル出身者を採用しようとしません。それは、多くの場合、コンサルティング業界が長くなればなるほど、そして優秀であればあるほど、私にとっては受け入れがたい上述の傾向を身につけている可能性が高いからです。

多くのポストコンサルタントにとってクライアント企業が抱えているブランドは「儲けるための無形資産」であって「クライアント企業の社員が心のよりどころにしている象徴」ではありません。しかし、本当のブランド価値はどちらでしょうか?消費者にとっての訴求力、それも確かに大きな価値です。しかし、組織が再生するための底力となるのは、そのブランドの社員に対する求心力ではないのでしょうか?

ある企業が主要ブランドから撤退するという計画を白紙撤回したというニュースを見て、コンサル出身の方が「あの会社に将来はないんだから早めに清算すべきだ」「あのブランドはもともと利益率が低いんだから、こんなことやってる場合じゃない」と発言しました。しかし私はこのニュースを見ながら「あ、この会社は絶対に再生する」と思いました。

当時この企業は、数値的には絶望的でした。このまま業績悪化の一途を進んで、どこかに買い取られるという魅力すらなさそうでした。しかし、この利益率が低い主要ブランドに対する社員の思いをくみ取った経営陣が、撤退を白紙撤回したわけです。

コンサルティングファームは、こうした方がよいだろうなと思ったとしても数値的な裏付けをすることができないこうした提案をすることが難しいです(価値基準として愛社精神などというものを持っていない人が多いということもありますが・・・・)。ですから、バランススコアカードなどによる数値化が道半ばの現在においては、こうした「数値化することができない提案」をすることは、とても困難です。

しかし、現在私が従事している「マネジメントシステムを構築する」というコンサルティング分野においては、この「数値化することができない」ことこそが、もっとも大切な重要成功要因だと考えています。

さて、ここまでお読みになれば、なぜ私が「そんな会社嫌だ」と思われたか、お分かりのことと思います。

組織のマネジメントシステムを構築するにあたって中心となるのは、トップマネジメントと間接部門です。そこに、数値化できないものは切り捨てるという傾向が高い人たちが集まっていたら、どういう組織になるでしょう?

少なくとも私は、絶対に働きたくないタイプの会社です。

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