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組織で浮いてしまったらまずは何をするか

私が専攻してきた学問分野は「社会心理学」という心理学の1つです。社会心理学というのは、人間が社会的な行動を行うにあたって、他人や社会・組織規範などからどのような影響を受けているかを明らかにする学問です。(アルコール依存の問題などは学問としてではなくプライベート&教会の活動として取り組んでいます。こちらは臨床心理学という分野になります。)

社会心理学を大別すると「人と社会の関係」「人と組織の関係」「人と人の関係」「人の態度変容」の4分野があります。

人と社会の関係を研究した結果はマーケティング・政治活動に応用されることが多いです。人と組織の関係、これは「組織心理学」と呼ばれ、ビジネスの場での意思決定に関する多くの研究があります。人と人の関係、これは「対人分析」と呼ばれどのような人が組織に受け入れやすいか、どのような人が他人に正負の影響を及ぼすかを研究しています。(詳しくはアマゾンなどで「社会心理学」で検索して基礎入門書を読んでみてください。)

社会心理学は心理学の中でもとても勢力が小さく、なおかつ日本では著名な学者が現れていないこともあり、世間的にはあまり発信力がない学問分野です。しかし、組織で働くという観点からみると、かなり使える研究結果がたくさんある学問です。

多くの人は「心理学」という言葉から人の心の中の動きを分析する「臨床心理学」や「精神医学」を思い出すと思います。ロールシャッハテストや箱庭療法などは知名度も高いですよね。社会心理学ではこうした心の中の動きを分析する、というアプローチではなく「統計的に、ある行動パタン(態度)がどのような条件下で発生するか・影響を受けるか」を考えます。「なぜその行動が発生するか」という個人の心のレベルはあまり主役となりません。社会心理学の研究結果として、もっとも良く知られているのが「SRI2」に代表される入社時の心理テストでしょう。

こうした心理テストは、倫理的な良し悪しとは無関係に、ある社会的特性を示す人が組織の中でどのような行動パタンを取るのか、という統計データに基づいて組み立てられています。社会心理学の中でいう「対人分析」の結果を応用したテストです。

組織で働く上で役に立ちそうな研究結果を1つご紹介したいと思います。(「倫理的にはどうよ」と思われるかもしれませんが・・・・)

学校でも会社でも人気者と人気者にならない人がいます。人気者というほどではなくても、人から好かれて受け入れられている人となかなか受け入れられずに組織の中で浮いている人がいます。この違いを生じさせる原因(弁別性が高い事象)として、多くの社会心理学者の中で統一している見解が6つあります。

1.会う頻度(一般的には高い方が好意を抱きやすい)
2.会った時の気分(良い気分の時またはハラハラしている時に会った方が好意を抱きやすい)
3.外見(外見が優れている人に好意を抱きやすい)
4.思考・態度の同一性(自分と同じ態度や同じ思考パタンの方が好意を抱きやすい)
5.自己開示(自己開示を積極的にする人に好意を抱きやすい)
6.承認(相手を積極的に承認する人に好意を抱きやすい)

1と2は自分の側ではコントロールしようがありません(営業マンなどは1を求めて頻繁に訪問するわけですね。)。ですから組織の中で受け入れられたい、と考えたときに使えるのは3から6となります。

3.外見が優れている人とそうでない人の社会的地位や職業上の地位を分析した結果、明らかに外見が優れている人のほうが高い地位についていたという結果があります。これは、周囲が「外見が良い人のほうが良い」という偏見をもって小さい頃から接してきたため、外見が良い人の方が自信を持って行動するからではないか、と推察されています。(社会心理学というのは統計的な事実を発見する学問で、なぜこれが発生するのかは臨床心理学にゆずってしまうので社会心理学の研究知見としては、実はなぜこの違いが発生するのかは分かっていません。こちらに興味がある場合は臨床心理学の基礎文献に当たって下さい。)

外見の中には身体的魅力(体型・顔)が占める割合が大きいのですが、表情と清潔感が占める割合も大きいので生まれもっての美醜だけではなく、後天的努力でかなりリカバーが可能です。ですから、倫理的にはどうかとは思いますが、良し悪しではなく「人から受け入れられたい」と考えたら外見的な魅力を高める、これが自分がコントロールできる中では実は一番簡単な方法です。

4。思考・態度の同一性は学校や一般的な職場では使える方法です。相手の言うことに「そうですね」「そうだよね」と同意しつづけていれば良いわけです。会社でもよく「腰ぎんちゃく」とか「イエスマン」っていますよね。仕事の出来には関係なく、こういう人は上司に好かれるわけです。しかし、その人が上司以外に好かれているか、というとそうではありません。人から好かれるために「違います」を言わないということもたしかに一案なのですが、それではその相手には好かれますが、仕事を円滑に進めることができなくなります。ですので、これを積極的に活用することには問題が大きいのです。

実験結果でもっとも大きな弁別性を示したのが5と6でした。つまり「積極的に自分の考えを周囲に伝えた上で、相手に対してあなたのことに気がついていますよ、あなたに感謝していますよ」ということを伝えることができる人、です。「そんなこと実験しなくたって当然じゃないか」と思われたかもしれませんね。確かに、当たり前のことです。しかし、あなたの周りを見回してみてください。人に好かれたい、と思いながらも「自分が好かれていないのは相手が私を嫌いだから」という態度を取る人、って多くありませんか?こういう人は6.承認の正反対の行為を採用していることになります。また、自分のことは話したくないけれど、周囲には受け入れられたい、という人も多いですよね。

5と6は、変数としては一番大きいのですが、実は性格矯正にあたるため「人に好かれたい」と考えている人がすぐにできることではありません。臨床心理学の手法であるカウンセリングや自己分析を活用しながら、考え方の癖を変えていく必要があります。

ですから、私は組織の中で浮いてしまっている人には「外見を変えて下さい」とお願いします。それが一番簡単で、かつ統計的にも優位な変数だからです。5・6の能力が高い人は、外見に多少課題があっても、すぐに組織に受け入れられていくので、ある程度のTPOを踏まえた服装にさえなれば、その後は全く指導しなくなります。しかし、5・6の能力が低い場合には、外見をコントロールする以外には組織(やクライアントとの対人行動)が良くなることはありません。

もちろん、外見だけが良くなれば人に受け入れられるというわけにはいきません。少しずつ、承認・自己開示が出来るようにならなければ、いつまでも組織の中では浮いたままでしょう。でも、とりあえずは外見をこぎれいにして表情を生き生きとする、これだけでも処世術としてはかなり効果的なのです。

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