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コンサルティングサービスの品質を判断する

現在は内部統制や情報セキュリティのコンサルティングをしていますが、私のキャリアはポストM&Aの組織整備から始まりました。

ポストM&Aで一番大切かつ困難なことは、組織制度の見直しと、新しい制度を新しい組織体に浸透させることです。今から約12年ほど前に1600人の会社にいた際に30人の会社の株式を取得し、1年後には吸収しました。その際に利用した枠組みが、プライバシーマークと安全対策事業所認定と社名の見直しプロジェクトでした。

プライバシーマークは部門別に取得することが難しく、全社一丸となっての活動が必要です。そのため、情報セキュリティの強化という目的だけではなく、新しい制度を新しい組織体に浸透させるために適したフレームワークであると考えたわけです。

それまでは、俗に人事コンサルティングといわれる分野の手法を利用して組織制度改革をしていました。しかし、マネジメントシステムと呼ばれるPDCAサイクルを組織に浸透させていくフレームワークを適切に構築・運用することでバラバラだった組織の気持ちが1つになっていくという経験をし、それ以降、マネジメントシステムと呼ばれる組織システム論を積極的に活用して仕事をしてきました。(ISOの認証制度や経営品質賞、TQC・TQM、シックスシグマなどは全てマネジメントシステムの1手法です。)

私はマネジメントシステムやISOの専門家としてキャリアを出発させたわけではなく、組織を改革していく手法・道具としてISOを取り扱ってきました。今までのキャリアを振り返っていても「利益部門」にだけ在席していた期間は短く、管理部門(人事や総務人事、人材育成、経営企画など)に在席し、兼務として研究職やコンサル部門に在席していました。今でも私の得意分野は「組織の活性化や組織管理(特に人事制度設計)」と人材育成であると認識しています。

もちろん「情報セキュリティやリスクマネジメント・監査の専門家」として必要なスキルと経験を有していないわけではないですが、これらのスキルはあくまでも「組織の活性化」のために身につけたものであって「ISOのマークを取るため」や「最低限度の法律対応をするため」に身につけたものではありません。また、単に「ISOのマークを取るため」や「最低限度の法律対応をするため」であれば、私よりも安く適切なサービスを提供してくれる人はたくさんいると思います。こうしたスタンス(と価格)を理解して、本当にセキュリティを向上させたい、会社を良くしたいという想いが強いお客さまがリピートオーダーを下さっていることを、心からありがたく思っています。

ところで、単にISOを取るだけのコンサルティングと、組織を活性化させるためのツールとしてのISOコンサルティングの最大の違いは何だと思いますか?

どちらのスタンスをとったとしても、出来上がる「規程類やツール類・記録類」はほぼ同一です。つまり、私が重視しているコンサルティングサービスの最大のノウハウはこうした文書や紙ではないということです。自分が作ったツールや規程類・提案書をノウハウとして抱え込んで、他人に開示することを拒む人がよくいるのですが、私自身はこうした紙類は内部・外部こだわらず、どんどん開示してしまいます。近頃は会社に怒られるので外部のNPOや委員会活動は自粛していますが、基本的にはこうしたことは強みとなるノウハウではないと考えているからです。では何が強みなのでしょうか。

いくつかありますが、強みの1つは「規程類やツール類・記録類」を組織に落とし込んでいく(私自身はよくインストールする、という表現を使っています)ための仕組み作りです。

例えば、ルールを変えた時に、どういう説明を行い、どういうメディアを使って新しいルールを告知・広報していくかによって、組織の構成員の心理的な抵抗は大きく変化します。

メディアというのは、イントラネットや電子メールといったITメディアだけを意味しているわけでは有りません。新しいルールの変更の告知方法は、

  1. 組織のトップが肉声でメッセージを発する
  2. イントラネットにトップが変更した経緯を説明しているビデオクリップを載せる
  3. 新しいルールを策定した組織のメンバーが全部門を行脚して経緯を伝える
  4. 新しいルールを策定した組織のメンバーは各部門の責任者にだけ説明を行い部責任者が各部で説明を行う

など、いろいろな手法(メディア)が考えられます。

これは、どの組織にも当てはまる正解があるわけではなく、各組織の特性を踏まえて、コストと組織構成員のモチベーションマネジメンを秤かけて、かけるべきコストを見極める必要があります。こうした組織分析は私の強みというよりは、私が所属しているグループメンバーが身につけている強みであると考えています。

「新しいことをしようとすると必ず抵抗がある」ということは事実です。特にポストM&Aや成長課程のベンチャーカンパニーは日々変更の連続で、組織構成員は変化に疲れ果てています。

しかし、新しいことを始める理由やそのメリット・デメリットすら説明せず、ルールが変わったという事実だけを電子メールの一斉メールや社内イントラネット経由で告知する、という方法を取ることで、組織構成員が抵抗せざるをえないように追い詰めている会社が多いことも事実です。また、形が残る規程やツールの品質にばかり注力し、どうやって変化を組織にインストールしていくのかという点を重視しないコンサルティングファームが多いことも事実です。(コンサルは口だけで責任を取らないと言われても仕方ないよなあ、と思います。)

変化を起こすことができるコンサルティングと単に紙を作るたけのコンサルティングの違いを、組織変革の経験がない人がポテンシャルクライアントに説明するのは、至難の技です。この困難を乗り越えるためには、まず自社で変化を起こす際に、細心の注意を払い、従業員のモチベーションに配慮した変化の告知方法を採用しつづけることで、モチベーションマネジメントの利点を経験してもらう必要があると考えています。経験したことがないものを売るのは難しいです。また、良いものに触れ続けていれば、自然とそれを当然のことだと考えるようになりますからね。

ですから私は、コンサルティング会社の品質は、その会社の管理部門の能力を見れば想像がつくと思っています。特に、社内規程や人事制度を所管する人事部門や総務部門のサービスマンシップはコンサルティングサービスの品質と比例すると思っています。ですので、実はコンサルティングファームのサービス品質をもっとも適格に評価できるのは、人事部門と折衝しているヘッドハンティング会社や人材紹介会社なのではないかなあ、などと考えています。

人事部門や総務部門が、それだけの覚悟をもって外部折衝しているか、っていうとかなり疑問ではありますが(笑)。

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