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出張申請を書きながら、うんざりしています

出張するたびに「出張申請」なる書面を作って会社に提出します。紙かデータかの違いはあっても、どの会社でも同じような申請が義務付けられていると思います。

この書面を出すたびに、心の中で軽くうんざりします。それは、日本の労働法の限界というか、前提を思い知らされるからです。

ご存知のとおり、「出張の往復時間は業務時間外」です。判例法でも、労働基準監督署の見解でも、同じ結論が出ています。つまり、日本の労働環境における一致した意見ということになります。ですから出張手当というのは会社が「好意で」出してあげているお手当てなわけです。

「移動時間は好きなことに使えるのだから業務時間ではない」という解釈は間違いではないと思います。しかし、この考え方には大きな欠陥があります。それは「労働者には仕事以外にもしなければいけないことがある」という前提が忘れられているということです。

移動時間中に食事を作ることはできないし、部屋の掃除をすることもできません。ましてや、家族に投薬をしたり、子供を寝かしつけることができるはずがありません。

こうした機能を代替するためには、1日あたり6000円から15000円程度を支払って、ハウスキーパーやベビーシッターを雇わなければいけません。家族に外食させるのであれば、その費用も上乗せです。

子育てや介護をしている人が出張できない、というのは嘘だし、そういう目で見られるのは大変に迷惑です。そんな目でみるのは、配慮ではなく、単なる蔑視です。しかし、こうした人達が出張をするとコストがかかるということは事実です。

例えば、就学前の児童を3泊4日の出張に連れて行くと、4日間地元の保育所に臨時預かりで預ける金額と、ホテル代が追加コストです。しかし、この場合は「子供と向き合う時間を削る」というヒッドゥンコストはかかりません。ですから、多くのお母さん達は長期出張に子供を連れて行くわけです。

しかし、子供がいる男性社員はどうでしょう?おそらく、連れて行かないですね。それは、「家族から子供と向き合うという機能を期待されていない」ということもあるとは思いますが(そして、それはそれで、大変 情けないし、悲しいことだとも思いますが)、最大の理由は「日本の労働制度は、労働者というのは会社以外では働いていないという前提で組み立てられているから」だと思います。

日本の就業規則には世界的に見て労働界七不思議とも思える不思議な条項があります。それは「副業禁止条項」です。業務時間外に何をしようと勝手なはずなのに、就業時間以外に対する拘束を就業規則でしているわけです。しかも、この条項に対して裁判所は「違憲であるか合憲であるか現時点では判断できない」としています。その理由は「そもそもこの条項は労働者の過労を防ぐためにあるから」だそうです。

ここ半年間ほど、こうした日本の労働制度を「当たり前のこと」としか考えてこなかった方々とご一緒する機会が多々あります。彼らからしてみると、会社以外で就労義務を負っていないということは「当然のこと」です。そして、私からしてみると会社以外で就労義務を負っていないということは「家族としての責任放棄」です。また、「継続的に学習する姿勢の放棄」とも感じます(時間外に大学院や語学学校に通うという前提が皆無な発想なので。)

しかし、日本の労働制度を考えると彼らの考え方を国は「当然のこと」と考えていることは明らかです。

労働基準法は労働者を守るための制度なはずです。しかし、こうした労働基本法ですら、企業戦士を前提として作られているのが、日本の現状です。少子化は、当然の帰結でしかありませんね。

出張申請を書くたびに、心の底からため息がでる今日この頃です。

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