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他人は何も言ってくれない

労務関連の研修を受けました。午前中がリスクコミュニケーション(企業や従業員・役員が犯罪を犯したり巻き込まれたときやクレームへの対処)で、午後が労働基準法に関するセミナーでした。

午前中は「ふーん」という感じだったのですが、午後のセミナーが始まろうとするその瞬間、「うげっ」と固まってしまいました。

セミナーで、今まさに話そうとしている講師から発せられるあまりに強烈なネガティブオーラに目が釘付けになり、まじまじど凝視してしまいました。

講師はまだ一言も発していません。でも、この人の性格や考え方、人との接し方など、言葉を聞くまでも無く明確に理解できました。聞くだけ無駄だな、これからの2時間どうやって過ごそうかな、などと考えていたのですが、話し始めて5分で「退室して美味しい空気を吸うか、皿まで食らうかだな」と考えを改めました。

そこで、講師の態度や言葉をノートして「どうしてここまでネガティブオーラを放っているのか」を分析することにしました。

講義内容は労働基準法の基礎。巷には、2時間程度の導入講座など、有料・無料を問わずゴロゴロ転がっています。 私が受けた講義はそれほど高価ではない、それほど有名ではないけれども実務経験者が集まって話をするという連続シリーズの1つです。講師は、司法試験合格から18年経っている、男性の弁護士です。経歴とインターネット上の情報を拝見する限り、労務関連訴訟に長年携わっているようです。スピーカーとして、法務知識に関してはそれほど問題があるとは思えません。

しかし、彼の法務知識を確認するよりも前に、セミナールームのドアを開けて歩いている彼の姿を一目見て、私は「ウゲッ」と思ったわけです。そう、見た目があまりにもひどかったんです。

確かに、生まれついての容姿も美男子とは言えません。しかし、例え彼が美男子だったとしても、全身からあふれ出ている「俺は大物なんだ」「こんなところで話す男じゃないんだ」「どうせ話したってお前らには分からないだろう」という強烈なオーラの前では同様に「ウゲッ」と感じて固まってしまったと思います。

懸念していた通り、2時間の講義の中で彼は26回も自分の講義の品質に関する言い訳をしました。

言い訳例

「こんな短い時間じゃあ分からないと思うけど」

「まあ、労働基準法を自習した言っていう気持ちにでもなってくれればいいんで」

「本当は1週間毎日話したって基礎の基礎も分からないくらい大変な内容なんだから」

そして、案の定、下唇を突き出して、憮然とした表情を続けていました。自分の講義の内容に満足してもらえる自信もなく、だからといって自分の準備不足を素直に詫びる覚悟もなく、現実の案件と法律上の建前の区別を明確にするだけのビジネスに対する知識もない彼は、居並ぶ現場のプロ達の前で「俺は弁護士様なんだ」という態度を続ける以外にはその2時間を乗り切る術がなかったようです。

しかし、繰り返すようですが、私は彼がこういう性格だということを、彼が話し始める前には気がついていました。

なぜでしょう?

いくつかありますが、主たる理由は以下の5つです。

  1. 部屋に入ってきた時の目つき
  2. 弁護士バッチの磨きこみ度
  3. スーツ
  4. 髪型
  5. 表情

彼は入室した時に、受講生を正面から見ることが出来ずにコソコソを盗み見ながら入ってきました。どんな受講生がいるのか興味はあるものの、受講生の特徴に合わせて話をカスタマイズするスキルが無いことは自覚している、でもそういいきるにはプライドが高すぎる、ということが一瞥して分かる態度でした。

そして、2-5は全部バランスの問題です。

よれよれで折り目が消えかけた何回繰り返して着ているのか分からない毛羽立った安物のスーツに、同じく洗濯機で洗っただけでアイロンもかけていない擦り切れて下着が透けて見えるシャツ。そして、明らかに靴べらを使っていない踵が折れ曲がって、なおかつ足の幅にあっていないらしく横じまが入った革靴。そして、スーツのポケットからみえる財布とベルトのバックルには巨大なブランドのマークが入っています。これだけだったら「おしゃれに興味がない専門家」かもしれません。しかし、胸に着けた弁護士バッチは明らかに頻繁に磨き上げています。また、歩きながら左手で何度も弁護士バッチを触るしぐさからは、権威にすがる自信のなさと、バッチを無言で聴衆にアピールしたがっていることが伝わってきます。

情けなさそうな手間のかかっていない外見からは「気弱で人前で話すことに慣れていない」とうキャラクターを読み取ることも出来ます。しかし、彼の場合はそうではないことは明らかでした。

表情が「俺は偉いんだ」「俺がどれほどすごいか、あんた達は知らないだろう」という強がった尊大さがにじみ出ています。

ビジネスパーソンを前に労務実務に即して話す自信がないのであれば、素直にそれを認めて「司法の専門家として」話せば良いでしょう。聴衆だって、労務実務を知りたかったら、会社の労務責任者が講師をするセミナーに参加します。

彼は自分の弱い部分、苦手な部分を素直に認めることができないようです。不正競争防止法に関するコメントで、一部不適切な表現を受講者から指摘された際にも「それは法律では違いますから」と言い張り、自分の誤りを認めることが出来ずにいました。

ビジネスの場では、どれほど「ウゲッ」と思っても、正直にそう指摘してくれるほど親切な人はいません。ニコニコと専門知識の豊富さに敬服するフリをしてくれます。でも、本人も薄々は他人の評価に気がつきますから、人前に出る場では人の視線を撥ねつけるように権威で押さえ込みにかかったり、言い訳をし続けるわけです。

言い訳を続けることのみっともなさ、外見に対する自信がないけれども自信がないというおとを認めて素直に他人のアドバイスに従うことが出来ないというプライドなど、身内だからこそズバッと「みっともない」と言ってくれます。

我パートナーも、私が何か指摘するたびに「そんなこと他の誰にも言われたことない」「お前が神経質すぎるんだ」などと言い返していましたが、近頃は「そうか、他人は言ってくれないんだ」「俺も人には言わないもんなあ」と分かってきたようです。

まずは、一番身近な人からのフィードバックを素直に受け取りませんか?

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